トレーニングデータに自社記事が使用されているとして。
NPRが、New York Timesは知的財産権の侵害で、人工知能チャットボットChatGPTの開発元OpenAIに対する訴訟を検討していると伝えています。ChatGPTのトレーニングにNew York Timesのコンテンツが使用されているとの疑惑のようです。
契約準備から一転訴訟へ?
New York Timesは、紙面の記事にAIツールを組み込むために数カ月にわたりOpenAIと交渉を開始し、ライセンス契約しようと動いていました。
しかし、交渉はすぐに悪化。現在New York TimesはChatGPTがジャーナリストの代わりになり、競合相手になる可能性を懸念しているようです。
OpenAIは、元々ある報道から情報を生成することで人気の検索ツールとなり、ニュースメディアからますます多くの読者が離れ、代わりにAIツールに移動していってしまう可能性があります。
New York Timesは、ChatGPTが既に自社のデータを使用して許可なしに情報を生成しているため、法的措置を検討していると報じられています。
訴えられたらどうなる?
OpenAIが著作権を侵害しているかはまだわかっていません。これまでにこういった事例がないため、New York Timesは未知の領域に踏み込むという感じですね。
どうなっていくかというと、例えばOpenAIに対して、New York Timesのデータをトレーニングモデルから削除するよう命じられるなどの結果が予想されます。となると、おそらくChatGPTは新しいデータで再トレーニングすることになりますが、かなりのコストがかかってきそうです。
AIを研究するヴァンダービルト大学の知的財産プログラム共同ディレクターであるDaniel Gervais氏は訴訟について、「もしある企業がコピーしているものが何百万という数なら、その企業にとって致命的なものになる可能性があります。著作権法はしばらくの間、AI企業の前に立ちはだかってくるでしょう。どのように解決策を交渉するかが決まってくるまで、その影響は続くでしょう」とNPRにコメントしています。
もしNew York TimesがOpenAIに対して訴訟を起こした場合、そしてOpenAIが著作権法に違反したと認められた場合は、著作権を侵害した物事に最大15万ドル(約2100万円)の罰金を課せられる可能性があります。
著作権の問題が多いOpenAI
OpenAIの発展に伴ってここ数カ月間、すでにいくつかの訴訟が起こされています。
アメリカの有名コメディアン、サラ・シルバーマンさんは、先月OpenAIが彼女の著書『The Bedwetter』のコピーをAIトレーニングに使用し、著作権を侵害しているとOpenAIを提訴しています。
シルバーマンさんは、『アララト』の著者Christopher Golden氏、そして『サンドマン・スリム』の著者であるRichard Kadrey氏と一緒にOpenAIを訴えています。
他のニュースメディアも、OpenAIがメディアの記事を無断でトレーニングに使用していることを批判しています。Wall Street Journalを所有するNews Corpもその1つです。
News CorpのCEOであるRobert Thomson氏は、5月のメディア会議で、「メディアの知的財産は脅かされている。それに対して賠償を強く主張すべきだ。AIは読者がジャーナリズムのウェブサイトに行かないように設計されてるため、ジャーナリズムが致命的に傷つけられている」と発言したとFinancial Timesが伝えています。