イーロンの目的は「Xとテスラのデータを使ってAI企業を作ること」説

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  • author Mack DeGeurin -Gizmodo US-
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イーロンの目的は「Xとテスラのデータを使ってAI企業を作ること」説
Image: kovop / Shutterstock.com

すべてが壮大な伏線なのか。

IT業界きっての億万長者、イーロン・マスク氏。ここ最近の彼の常軌を逸した行動を見ていると、どうも方向性を見失って迷走しているのでは、と疑ってしまいます。しかし、高名なジャーナリストで伝記作家でもあるウォルター・アイザックソン氏が最近タイム誌に語った話によると、「経営方針は混乱し、個人的な復讐に走ることもある」などという迷走ストーリーは、マスク氏の真実ではないのかもしれません。

実は、Twitter(現:X)テスラでの明らかな失策もまた、マスク氏の壮大かつ近未来的な計画のための寄り道にすぎないのだとか。記事が伝える彼の本当の狙い、それは人工知能(AI)なのです。

テスラとTwitterのデータでAIを作る、という野望

テスラ、スペースXニューラルリンク(マスク氏が所有する脳デバイス企業)をはじめ、彼が手掛けるプロジェクトの製品はどれも何らかのかたちでAIが大きくかかわっています

各々の企業は基本的には独立経営されていますが、タイム紙の記事によると、マスク氏はいずれこれらの企業すべてを統合し、パワフルで汎用的な人工知能を生み出すことを最終目標にしているんだとか。最近立ち上げられたスタートアップのxAIもまた、その一環なのだそう。

マスク氏はTwitterユーザから吸い上げたテキストデータと、テスラの完全自動運転システムが撮影した現実世界の画像を組み合わせることで、ChatGPT方式のAIチャットボットと、現実世界をナビゲートする物理的なロボットの両方を作ろうとしている、とこの記事は主張しています。

すべては「シンギュラリティ」への警戒心がきっかけ?

アイザックソン氏とのインタビューにはマスク氏も途中参加。最近になって右派寄りの政治観を示すことが多いマスク氏は、「深夜のTwitter遊びに時間を使いすぎたことに気づいた」とコメント。近い将来、知能を持った機械が人間を追い抜く「シンギュラリティ」がやってくると思いを馳せ、「このまま何もしないわけにいかない」と説明しました。

マスク氏はシンギュラリティについて、「我々が予想するより、早く起きるかもしれない」と語っています。

シンギュラリティへの恐怖が、xAIを立ち上げるきっかけになったそう。xAIはマスク氏が「AIの安全性」に注目したと主張するあらたなベンチャーで、Googleが所有するAI企業DeepMindの元研究エンジニアであるイゴール・バブシュキン氏をはじめ、この業界でトップクラスの人材を採用しています。

マスク氏はそんなxAIの研究者らに、コンピューターコードを生成できるAIと、ChatGPTに対抗する「政治的に中立な」チャットボットを作るよう指示したと、タイム紙は報じています。

xAIのウェブサイトを見ると、同社の長期目標は「宇宙の本質を理解すること」。マスク氏はかつて、OpenAIでAIの安全性に取り組んでいたこともありましたが、マイクロソフトから投資を受けたことをきっかけに同社を辞めてしまっています。

マスク氏をアインシュタインと並ぶ天才として描く伝記作家

伝記作家であるアイザックソン氏は、誤解されやすい風変わりな天才像が得意。これまでにアルバート・アインシュタイン、スティーブ・ジョブズ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどを題材にしてきました。

タイム紙の記事から察するに、アイザックソン氏が今月末に発表するマスク氏の長編伝記は、南アフリカ出身の億万長者をアインシュタインやダ・ヴィンチと同等の「歴史を変えた人物」として重厚に扱い、不器用でときに偏屈な億万長者の少年、といった評価に異論を唱える内容になるのかもしれません。

同氏は今年はじめ、テック・ジャーナリストのカーラ・スウィッシャー氏との対談でマスク氏のことを「今、最も興味深い人物」と称しています。

Twitterとテスラは、マスク流「AIの神」のエサ

マスク氏は昨年、440億ドル(約6兆4850億円)を投じてTwitterを買収。しかしすぐに経営から離れる姿勢を見せ、「史上最大の個人資産の損失」としてギネスに認定されるほどの事態となり、批評家からは「財政的失敗」として非難されました。

そんな泥沼の混乱に陥ったマスク氏ですが、アイザックソン氏はそんななかにも「パワフルなAIシステムを訓練する材料となりうる、Twitterユーザのデータという金脈が隠されている」と言います。

アイザックソン氏は1兆を超えるTwitterの投稿データを「人類の集合知」と呼び、OpenAIやGoogleのような競合他社がすでに持っている、膨大なデータセットに対抗するチャンスになるかもしれないと指摘。マスク氏も、Twitterを買収してはじめて、そのデータの価値に気付いたと認めています。

「それはあくまで副産物で、買収後にはじめて気づいたのです」とマスクは語ります。

テスラの画像データを1日1600億フレーム吸い上げか

しかし、タイム紙によると、Twitterはマスク氏の数多あるAI戦略の1つに過ぎない、としています。テスラの半自律運転システム「オートパイロット」と「フルセルフドライビング」からも、1日あたり推定1600億フレームもの画像を吸い上げていると指摘。テキストベースのTwitterデータとは異なり、テスラが撮影する画像は、車両が世界と相互作用している様子を映し出していますから、マスク氏が昨年披露したあの巨大なおばけロボットが実際の脳を持つことになるかもしれません。もしかしたら、ですが。

「テスラとTwitterは、データセットと処理能力を2つのアプローチから提供することが可能です。つまり物理的空間でのナビゲーションと、自然言語での質問に対する回答を機械に教えることです」。

Twitterおよびテスラに対し、米ギズモードはコメントを求めたものの、回答およびマスク氏のコメントは得られませんでした。