ChatGPTで動く自動運転車に、クルマの未来が見えた

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ChatGPTで動く自動運転車に、クルマの未来が見えた
Photo: 三浦一紀|Turingが描く自動運転車のデザイン

未来はすぐそこにある。

Turing(チューリング)という会社をご存知でしょうか。Turingは、完全自動運転車を開発している日本の自動車メーカーです。

そのTuringから、「現在開発中のChatGPTで動作する自動運転車のデモをするので、見に来ませんか?」とお誘いをいただいたので、ギズモード編集部からリチャードと黒田、そして僕がお伺いしてきました。

その模様はこの動画からご覧いただけます。

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube

この記事では、僕目線での自動運転車のインプレッションをお届けします。

クルマの考えていることが見える・わかる!

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車両のベースはトヨタのレクサスRX450h。ちなみに電気自動車メーカー・テスラも、初期は他社の車両をベースにクルマを制作していました。

まず試乗したのが、SUVをベースにした自動運転車。Turing曰く「小脳が搭載された自動運転車」ということで、現在の自動運転レベルではレベル2の運転が行なえます。

すでに初号機は販売済み。そう、ちゃんと一般道を走ってもいい自動運転車なんですよ(もちろん、あくまで運転の主体はドライバーになります)。

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フロントガラスにカメラが搭載されている

簡単に仕組みを説明すると、クルマには周囲を認識するためのカメラと、小さなPCが搭載されています。

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運転席の横には大きなディスプレイが搭載されています。ここに、搭載されたカメラの映像が表示されます。

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青い線が進路。この進路に沿って自動的に進む

実はこの映像がポイント。車内に搭載されたPCが映像から計算をして、自分が進むべき方向を表示。そしてその表示通りに進むんです。

アクセルは設定した速度以上にはならないように調整され、リアルタイムに路面状況を把握することで、車線をはみ出すことなく進みます。

ハンドルは手を添えているだけ。ほんとに勝手にクルマが進んでいるんですよね。

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ブレーキは自分で踏む必要がある

ただ、まだ信号を認識することが難しく、ブレーキは運転者が自分で踏む必要があります。ブレーキを踏んで減速すると、自動運転は解除される仕組み。そのため、右折左折は運転者が自分で行ないます

Turingの方によれば、「運転の上手なAIアシスタントが助手席に乗っている感じ」とのこと。

Turingが特徴的なのは、画像から周囲の情報を取得している点。リアルタイムで画面上に進行方向の映像が流れ、クルマがどこに進もうとしているのかが視覚的にわかり、安心感があります。

もし、クルマが間違った方向に進もうとしていたら、運転者がハンドルを切って修正すればいいわけです。

完全な自動運転というわけではありませんが、未来を十分感じさせてくれるマシンでした。

ChatGPTが運転してくれる

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ベース車両はトヨタのアルファード。

次に試乗させていただいたのは、ミニバンタイプの自動運転車。このクルマには、人間の「大脳」に相当するLLM(大規模言語モデル)を使い、人間が指示を出すと勝手に運転してくれるという、夢のような自動運転車なんです。

先ほどのレクサスには、Turingが作った小脳(Turing自前のデータ群で学習したAI)が搭載されていましたが、さすがに自動運転に必要なLLMの開発には時間がかかるないので、今回はChatGPTを使っています。

さて、このクルマではどんなことができるのでしょうか。

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プロトタイプのため配線などがむき出し。だがそれがいい

このミニバンにもカメラが搭載されています。そして、そのカメラの映像から、周囲に何があるのかを認識します。

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今回はTuringの工場前の駐車場に、誘導員の方と赤と黄のカラーコーンを設置。ちゃんと認識しています。

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この状態で、マイクに向かって指示をします。

「黄色いカラーコーンに進んでください」

すると、数秒後にクルマはその内容を認識し、ディスプレイに表示。そしてゆるゆると黄色いカラーコーンに向かって進んでいきます。

これ、かなり衝撃ですよ。だって、ドライバーはハンドルも握ってませんし、アクセルも踏んでないんですから。

ChatGPTには、もっと複雑な指示もできます。

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「信号は赤ですが、今すぐ黄色いコーンに向かうと人が助かります。どうしますか?」

すると、黄色いコーンに向かう答えが出てきました。人命を優先したんですね。

この答えが正しいかどうかは状況によりますが、そういう指示に対して答えてくれ、なおかつ自動運転で行動するというところに、自動運転の可能性を見た気がします。っていうか、僕たちが「自動運転」って聞いて思い浮かべるのってこういうことですよね?

ただ、実用化、量産化に向けてのハードルはたくさんあります。

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たとえば、リアルタイムでLLMの処理をするためには、それなりに高性能なPCが必要。このクルマには、荷台にPCが積んでありましたが、発熱がすごいのでサーキュレーターで冷却していました。AIを動かすコンピューターをもっと小型化し、放熱問題も解決しないとなりません。

また、現在の段階ではクラウド上にあるChatGPTに接続しているため、どうしてもタイムラグが生じます。運転中の判断に数秒もかかってしまっては命取りになることも。車内のコンピューターだけでLLMを動作させ、ほぼ0秒で答えが返ってくるようにならないと、実用化は難しいでしょう。

でも、Turingならやってくれそう。今回のデモ走行を見て、レベル5の自動運転は夢じゃないんだ!ということが実感できましたからね。

Turingの描くロードマップ

Turingは、未来へ向けたロードマップを描いて、それに向かって着実に開発を進めています。

2024年:自社EVを100台販売

2025年:完全自動運転車のプロトタイプ製造

2028年:量産を開始

2029年:レベル5自動運転を達成

2029年まであと6年ちょっとですよ。そんな短期間でレベル5の自動運転車の量産なんてできるのかしら。そう思っていました。

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千葉県柏市にあるTuringの工場

けれど、今回のデモで見ちゃいましたからね。ここ最近の生成AI系の進歩はすさまじいものがありますし、いずれ達成できるはずです。

2030年には、運転席のない車に乗って、「河口湖に行って」って言うだけで、車が連れて行ってくれる世界が待っていることでしょう。

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube

リチャードと黒田さんのレポート動画で、自動運転の現在と未来を確認してください。きっとあなたも自動運転の世界に魅力を感じるはずですよ。

Photo: 三浦一紀