契約書が読みづらいのは専門用語が多いからじゃなかった!

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契約書が読みづらいのは専門用語が多いからじゃなかった!
Image: zimmytws (Shutterstock)

わかってもらう努力。

契約書などの法律的な文書。読みづらいですよね。内容が頭に入ってこない。必要にかられてがんばって読むときもありますが、それにしてもわかりにくい。

これをスラスラ日常的に読んでいる弁護士さんってやっぱり頭がいいんだなと思っていましたが、それだけじゃないみたい。マサチューセッツ工科大学(MIT)がおもしろいリサーチをしていました。

契約書ってなんであんなに小難しいの?

昨年、MITが発表したレポートは、小難しい(ちっとも理解できないレベルで難しい)契約書について調査したもの。

高尚な調査をガッツリ簡単に言うと、契約書って普通の人でも触れる機会が多いから、よりわかりやすい文章にしたほうが社会にとって有益なんじゃね? という内容です。

調査チームは、何千という法的契約書をその他の形式の文章と比較、分析しました。

結果、契約書などが小難しい理由は、複雑な法律専門用語が含まれているからだけでなく、そもそもの文章力がないからということがわかりました。つまり、文章が下手くそだ!ということ。

たとえば、メインとなる文章の途中ど真ん中に付属の説明文が入り込んでいるなど、全体を読み解きずらい文章構造になっているのです。

シンプルな英文と対照的に、この手の文章が法律用語ゴリゴリ上乗せで書かれると、普通の人は理解するのがさらに困難になってしまうこともわかりました。

まぁ、当然でしょうね。わかりにくい文章な上に、馴染みのない単語が入っているわけですから。

弁護士だって小難しくない文章が好き

先日新たに発表された調査レポートでは、さらに深く掘り下げられており、そもそもなんで弁護士は専門用語を多様して文章作っちゃうの? というところに話が及んでいます。

調査では、100人を超える弁護士に協力を要請。元の調査で一般の協力者(非法律関係者)に行なってもらった作業とまったく同じ作業を弁護士にもしてもらいました。

結果、弁護士のスコアの方が、一般の人よりも高いものでした(たとえば、法的文章を思い出すというテストでは、一般人平均が38点だったのに対し、弁護士平均は45点)。

そりゃそうでしょうね、そういう文章に慣れてますから。

ただ、ここでおもしろいのは、より簡略化された読みやすいバージョンでテストすると、弁護士のスコアが50点以上にアップしたということ。

弁護士はシンプルな英文でも法的文章でも読解力に長けていることがわかりました。しかし、普通の人と同じように、弁護士も法的文章を読むほうがたいへんなんです。

調査を率いた1人、MITの脳&認知科学のEdward Gibson教授は、論文にそうコメントを添えています。

さらにはこんな調査も。弁護士100人を対象に、法律用語ゴリゴリ文章とそれのないシンプルな文章を判定してもらいました。

弁護士の判定は、シンプルな文章の方が圧倒的に文章としての質が高いというものに。また、シンプルな文章でも十分法律の実施力はあるといいます。

それどころか、自分または自分のクライアントもシンプルな文章の方に署名する可能性が高く、専門用語ゴリゴリのお堅い文章よりもシンプルな文章を書ける人の方を雇用したいという意見の一致もみられました。

弁護士コピペ問題

そこまで言うなら、なぜ法的文章は小難しいことになっているのでしょうか?

調査チームの仮説ではありますが、弁護士は法律用語が日常であり、読み解くスキルを持っているため、それを他者が読むときに理解しがたいということに思い至らない可能性が高いといいます。

ただ、この説明では「弁護士もシンプルな文章の方を好む」という今回の調査結果とは相いれません。

ということで、そもそも弁護士は契約書の内容を維持するため、専門用語・文章のコピペが多いからではないかという仮説が浮上しています。

「契約書を小学生でもわかるように要約して」なAIプロンプト、役立っちゃいそうですね…。