守られてる感、ある。
暗号化メールで知られるProton(プロトン)が、個人情報保護にフォーカスした、E2EE(エンドツーエンド暗号化)パスワード管理アプリであるProton Pass(プロトン・パス)を発表しました。
ここ数年で急成長を遂げてきたProtonは、電子メール以外にVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)、E2EEドライブ、カレンダーなど、ますます拡大を続ける個人情報保護のエコシステムを構築するために新機能を生み出してきました。昨年、暗号化メール一択だった当時のProtonMailからProtonに社名変更したことが、同社の姿勢を表しています。
Protonは、Proton Passが多数あるパスワードマネージャーアプリの中で「画期的なもの」になることを願っているそうです。
最近続いているProtonの変化と、今後どのような方向性を模索していくのかを掘り下げるために、米GizmodoがProtonのCEOであるAndy Yen氏にインタビューを行ないました。
Protonの最新情報
Proton Passは、Protonがこれまでリリースしてきた新機能の中で最も重要といいます。
現在はベータ版として招待制で提供されていて、LifetimeおよびVisionaryに該当するユーザーのみがアクセスできます。ただ、今年後半の一般公開を予定しているとのことなので、思ったより早くすべてのユーザーが利用できるようになりそうです。
Yen氏は、ブログでパスワードマネージャーに触れています。
Proton Mailのローンチ以来、パスワードマネージャーはProtonコミュニティから最もリクエストされた機能の1つでした。
Proton Passは、単なるパスワードマネージャーではありません。暗号化と個人情報保護を専門とする企業によって作られた最初のパスワードマネージャーであり、従来のものとはセキュリティー面で一線を画しています。
Proton Passが自信を持つ保護機能の技術的な詳細については、同社の公式サイトでセキュリティーモデルの概要が公開されています。
Protonが近年ロールアウトした新機能をいくつか紹介してみます。
・ ProtonMailのユーザーじゃなくても、Proton Driveにサインアップできるようになりました。
これによって、ProtonMailのアカウントを持っていなくても、GmailやYahoo!など、他社のメールアドレスで利用可能に。個人情報保護を重視するためにメールサービスから切り離したということですね。
・ VPNのブラウザ拡張機能が公開されました。
Protonによると、この拡張機能は同社のVPNサービスと「同様の保護を提供する」とされていますが、HTTP接続のみを暗号化するほんのちょっとした便利な追加機能のようです。
なお、VPNの有料プラン、もしくはProtonMailのUnlimitedに加入しているユーザーでなければ利用できません(訳者はProtonMailのProに加入していますが、残念ながらアップグレード要とツッコまれました。ぴえん)。
・ さらに、同社のVPNに接続されていない場合に、VPNサービス外との発信と受信をすべて遮断する「キルスイッチ」が最近導入されました。
キルスイッチをオンにしている間は、VPN経由じゃないとネットにつながらなくなります。個人情報保護をさらに強化する機能ですね。
個人情報保護の現在、過去、未来
Yen氏は、ここ数年の個人情報保護サービスに対する消費者の関心の高まりによって業界内の競争が活発化したことも、Protonのビジネス促進につながったといい、次のように語っています。
私たちが起業した当時、E2EE(エンドツーエンド暗号化)はスパイやクレイジーな人たちが使うもので、一般の人には知られていませんでした。
しかし、個人情報に関するスキャンダルが相次ぎ、監視資本主義や政府によるスパイ行為の危険性に注目が集まると、状況が一変しました。今では一般の消費者にもE2EEのようなサービスが知られるようになりました。
現在は個人情報保護の需要も高く、かつて大量のデータを保有していたテック企業たちは、まるで自分たちが個人情報の守護神かのように再ブランディングを試みています。
ケンブリッジ・アナリティカ事件や他の物議を醸す個人情報収集に関わってきたMeta(メタ)は、E2EEメッセージなどの機能を公約に掲げて、ユーザーに対して個人情報保護に努めているかのように見せかけています。
一方、Apple(アップル)はプライバシーを基本理念の1つに据えて、「プライバシー。これがiPhone」「プライバシー。これがApple。」などのキャッチフレーズを打ち出しました。やっていることは真逆なのに。
Yen氏は、これらの取り組みにはあまり意味がないとしてこのように述べました。
ビッグテックのビジネスモデルでは、ユーザーが本当に期待するレベルの個人情報保護の提供に積極的になれないでしょうね。
マーク・ザッカーバーグが何を言ったところで、彼がユーザーのデータを売って稼いでいるという基本的な事実を変えることはできません。
Yen氏はAppleも例えに出してこのように話しています。
Appleのような企業は、単にビジネスの優先事項を、データ販売から自社のための個人情報収集にシフトさせているに過ぎません。
Appleの「プライバシーに配慮する」は、「あなたのデータを利用できるのはAppleだけ」という意味です。
「サードパーティーのトラッカーや広告を無効化し、ユーザーのデータを収集して広告を販売することで自社の広告ビジネスを構築する」というのがAppleのビジネスモデルです。
つまり、Appleのプライバシー保護は、より多くの利益を得るために、壁で囲んだAppleの庭の中に追い込んだユーザーをさらに壁で囲って個人情報を収集するという、皮肉な策略以外の何物でもありません。
Yen氏はまた、Google(グーグル)などのテック企業が無料サービスを提供すると主張しながら、実際にはユーザーを商品にしているのに対し、Protonなどの個人情報保護に本気の企業は、ユーザーに対してより率直になっているとし、こう語りました。
私たちのビジネスモデルは、より誠実だと信じています。
私たちは、ユーザーに「インターネットは無料ではない」と正直に伝えます。
その代わり、より多くのサービスを希望するユーザーは、月にコーヒー1杯分の料金を支払うことで、自分のデータは自分だけのものになり、個人情報が保護され、セキュリティーが保証されるのです。
Protonのサービスを利用するようになって1年くらいになりますが、スパムメールもこないし、VPNも無料でそこそこ速いし、安心感は大きいですね。
Proton Passが一般公開されるまで、首を長くして待ちたいと思います。